個人事業開始で必要となる届け出-税金・社会保険・労働保険の手続き

個人事業をはじめる場合、さまざまな届出が必要です。起業した業種や従業員を雇うか等で、届出書類に違いがあります。まずは税務署への届け出はを済ませ、その他の手続きは該当する場合に手続きをしましょう。

提出先手続き対象者
税務署個人事業の開業・廃業等届出書個人事業を開始した場合は全員
所得税の青色申告承認申請書青色申告をする場合
青色事業専従者給与に関する届出書配偶者等が仕事をして給与を支払う場合
給与支払事務所等の開設届出書従業員へ給与を支払う場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書源泉所得税の納付を、毎月ではなく年2回にしたい場合
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書減価償却を定率法にしたい場合
消費税課税事業者選択届出書消費税課税事業者になりたい場合
都道府県税事務所事業開始等申告書(個人事業税)対象業種に該当する場合
労働基準監督署労災保険適用従業員を雇う場合
ハローワーク雇用保険適用従業員を週20時間かつ31日以上雇う場合
年金事務所社会保険(健康保険・厚生年金)加入従業員を雇い、要件を満たせば加入

税務署

1.個人事業の開業・廃業等届出書

開業したら必ず提出します。提出期限は開業から1か月以内です。提出先は個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

提出用と控用の2部を用意します。控用は、提出用のコピーでいいのですが、個人番号欄を隠してコピーするようにしましょう。

提出方法は、郵送で提出可能で、控用を受け取るために、切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。

2.所得税の青色申告承認申請書

決算申告で青色申告を選択する場合に提出します。提出期限は事業を開始してから2か月以内です。提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した、個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

こちらは複式簿記という会計処理をすることで、所得が65万円が控除されます。つまり、所得から65万円を引いた所得額で所得税を計算してくれる制度です。複式簿記の会計処理は会計ソフトで処理をすれば問題ないです。

2014年1月から、白色申告の人にも帳簿・記録の備え付けが義務になりました。そのため、個人事業主は、白色申告と青色申告の記帳の手間は、変わらないと思ってください。

提出期限に遅れると開業事業年度は適用されないで注意が必要です。節税効果が大きい手続きのため、忘れずに提出しましょう。

3.青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告をする事業者が生計を同じにする15歳以上の親族に給与の支払いをする場合に提出します。そのため、配偶者に仕事を手伝ってもらう方等は提出します。提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した、個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

提出期限は、開業した日又は事業専従者(仕事をする配偶者等)がいることとなった日から2か月以内です。

給与の支給を受ける青色事業専従者は、配偶者控除や扶養控除の対象にできなくなることに注意しましょう。

4.給与支払事務所等の開設届出書

個人事業主以外の従業員に給与を支払うことになった場合に提出します。提出期限は、従業員を雇うようになった日から1か月以内です。提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した、個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

従業員が10人未満の場合、下の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」もあわせて提出しておくと、税務手続きが楽になります。

5.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 

源泉所得税の納付を年2回にしたい場合に提出します。提出期限は、適用を受けようとする前月までです。提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した、個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

申請書を提出した月の翌々月分納付分から適用されます。7月に申請書を提出した場合、9月の納付分から適用されます。

6.所得税の減価償却資産の償却方法の届出書

設備等の減価償却資産を、定率法で会計処理したい場合に提出します。提出期限は、開業した年の翌年の3月15日までとなります。提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した、個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

個人事業者は原則として定額法にて減価償却をおこないますが、定率法選択したい場合は、この届出書を提出します。

定額法は、毎年一定額を費用にする償却方法です。これに対し、定率法は、最初の年に多くの費用を計上して、徐々に費用が少なくなる方法です。定額法も定率法も、最終的な費用総額は一緒です。設備を導入してすぐにたくさんの利益が出そうな場合は、定率法を選んでおくと節税効果があると言えます。

7.消費税課税事業者選択届出書

免税事業者が消費税の還付を受ける場合に提出します。提出期限は、開業した年の12月31日までとなります。開業した年以外は前年までが提出期限となります。提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した、個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する税務署となります。

新規事業者は最初の2年は消費税の納税義務がありません。しかし、輸出業をする事業者や開業にあたって多額の設備投資をしたため消費税の還付を受けようとする場合はこの届出書を提出して課税事業者となることができます。

この届出をすると2年間は納税義務を免れないことに注意が必要です。また、基準期間の課税売上が1,000万円を超えた場合に提出する「消費税課税事業者届出書」とは違いますのでご注意ください。

都道府県税事務所

事業開始等申告書(個人事業税)

事業の種類によっては個人事業税の対象となり、都道府県税事務所に届出が必要となります。個人事業税は、所得金額が290万円以下であれば、課税されません。提出期限は、事業を開始の日から15日以内に提出します。提出先は、提出先は、1個人事業の開業・廃業等届出書を提出した際に納税地とした個人事業者の住所地又は事務所の所在地を管轄する都道府県税事務所となります。

個人事業税の対象となる事業は下記となります。該当しない場合は、届出の必要はありません。

第1種事業(37業種)税率5%

  1. 物品販売業
  2. 運送取扱業
  3. 料理店業
  4. 遊覧所業
  5. 保険業
  6. 船舶定係場業
  7. 飲食店業
  8. 商品取引業
  9. 金銭貸付業
  10. 倉庫業
  11. 周旋業
  12. 不動産売買業
  13. 物品貸付業
  14. 駐車場業
  15. 代理業
  16. 広告業
  17. 不動産貸付業
  18. 請負業
  19. 仲立業
  20. 興信所業
  21. 製造業
  22. 印刷業
  23. 問屋業
  24. 案内業
  25. 電気供給業
  26. 出版業
  27. 両替業
  28. 冠婚葬祭業
  29. 土石採取業
  30. 写真業
  31. 公衆浴場業(むし風呂等)
  32. 電気通信事業
  33. 席貸業
  34. 演劇興行業
  35. 運送業
  36. 旅館業
  37. 遊技場業

第2種事業(3業種)税率4%

  1. 畜産業
  2. 水産業
  3. 薪炭製造業

第3種事業(28種類)税率5%

  1. 医業
  2. 公証人業
  3. 設計監督者業
  4. 公衆浴場業(銭湯)
  5. 歯科医業
  6. 弁理士業
  7. 不動産鑑定業
  8. 歯科衛生士業
  9. 薬剤師業
  10. 税理士業
  11. デザイン業
  12. 歯科技工士業
  13. 獣医業
  14. 公認会計士業
  15. 諸芸師匠業
  16. 測量士業
  17. 弁護士業
  18. 計理士業
  19. 理容業
  20. 土地家屋調査士業
  21. 司法書士業
  22. 社会保険労務士業
  23. 美容業
  24. 海事代理士業
  25. 行政書士業
  26. コンサルタント業
  27. クリーニング業
  28. 印刷製版業

第3種事業(2種類)税率3%

  1. あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復・その他の医業に類する事業
  2. 装蹄師業

労働基準監督署

従業員を雇った場合、労働基準監督署に労災保険の加入手続きをする必要がございます。雇用保険と違い、労働時間に関係なく加入が必要です。提出期限は、労働保険保険関係成立届は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内です。概算保険料申告書は、保険関係が成立した日の翌日から50日以内が提出期限となります。

個人事業者本人は原則加入できませんが、一定の要件を満たせば個人事業者本人も労災保険へ特別に加入できる制度もございます。

特別加入できる業種
業種労働者数
金融、保険、不動産、小売50人以下
卸売、サービス100人以下
その他300人以下
個人タクシー業、個人貨物運送業、建設業、漁船による水産動植物の採取、林業、医薬品の配置販売、廃品回収等0人

※労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。

労災保険適用の手続き

提出書類

  1. 労働保険保険関係成立届
  2. 労働保険概算申告書
  3. その他、営業許可証や賃貸借契約書

ハローワーク(公共職業安定所)

従業員を雇った場合、ハローワークに雇用保険の加入手続きをする必要がございます。労災保険と違い、労働時間によっては加入が不要です。提出期限は、労働保険保険関係成立届は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内です。概算保険料申告書は、保険関係が成立した日の翌日から50日以内が提出期限となります。

個人事業者本人は加入できません。労災保険のように特別加入がないことに注意しましょう。

雇用保険適用の手続き

雇用保険の加入条件

従業員(パート・アルバイトも含む)の「労働時間が1週20時間以上」+「雇用期間が31日以上雇うことが決まっている」場合は雇用保険に加入する必要がございます。

労災保険は事業主が全額負担の保険ですが、雇用保険は労働者と事業者双方で負担します。平成31年度の保険料の負担率は、一般事業の場合、労働者0.3%、事業主0.6%となります。

提出書類

  1. 雇用保険適用事業所設置届
  2. 雇用保険被保険者資格取得届
  3. 雇用保険被保険者証(雇用前に他の会社などで雇用保険に加入していた場合)
  4. 労働保険保険関係成立届の事業主控
  5. 営業許可証
  6. 個人事業の開業・廃業等届出書の控
  7. 工事契約書
  8. 事務所の賃貸借契約書
  9. 源泉徴収簿
  10. 給与支払事務所の開設届出書の控
  11. 労働者名簿
  12. 出勤簿・タイムカード
  13. 賃金台帳
  14. 雇用契約書(有期契約労働者の場合)

必要に応じて、公共料金等の請求書又は領収書、事業主の世帯全員の住民票の写し等の書類が必要となります。

年金事務所

社会保険加入の手続き

個人事業でも、要件を満たせば、従業員は社会保険(健康保険、厚生年金)に加入できます。ただし、個人事業主本人は加入ができません。

手続きは、事務所を管轄する年金事務所に行います。

個人事業で社会保険に加入できる要件

適用業種非適用業種
事業の種類
  1. 製造業(物の製造、加工、選別、包装、修理、解体)
  2. 土木建築業(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体、その準備)
  3. 鉱業(鉱物の採掘、採取)
  4. 電気供給業(発電、送電)
  5. 運送業(貨物又は旅客の運送)
  6. 貨物積卸業(貨物積卸し)
  7. 焼却清掃とさつ業(焼却、清掃、とさつ)
  8. 物品販売業(物の販売、配給)
  9. 金融保険業(金融、保険)
  10. 保管賃貸業(物の保管、賃貸)
  11. 媒介周旋業(媒介周旋)
  12. 集金案内広告業(集金、案内、広告)
  13. 教育研究調査業(教育、研究、調査)
  14. 医療業(疾病の治療、助産、その他医療)
  15. 通信報道業(通信、報道)
  16. 社会福祉更生保護業(社会福祉、更生保護)
  1. 農林水産業
  2. 飲食業
  3. 旅館・その他の宿泊所
  4. 洗濯・理美容・浴場・写真等の個人サービス業
  5. 映画・娯楽業
  6. 法律・会計等のサービス業(法律事務所、税理士事務所など)
従業員5人以上〇(必ず加入)△(加入は任意)
従業員5人未満△(加入は任意)△(加入は任意)

提出書類

  1. 新規適用届
  2. 被保険者資格取得届
  3. 被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合)
  4. 事業主世帯全員の住民票
  5. 賃貸借契約書
  6. 保険料口座振替納付書申出書
  7. 出勤簿またはタイムカード
  8. 労働者名簿
  9. 賃金台帳
  10. 源泉所得税の領収証
  11. 直近の決算書または確定申告書の控え

管轄の年金事務所により上記とは別の書類の提出を求められる場合がございます。